私的ゴルフスイング基礎理論

 これば僕の考えているゴルフスイングの基礎理論です。
 自分なりの解釈や方法論なので「こいつはこんなことを考えているのか」程度に読んでください。

1.アドレスポジション
 多くの場合、1章はグリップについてから始まると思うのだが私はその方法を取らない。アドレスポジションが良ければ、自然とグリップも良くなるというのが私の考えだからだ。
 なぜ、何よりもまずアドレスポジションを正しくしなければならないのかというと、ゴルフスイングが全身で行う運動だからである。更にいえば静止した状態から非常に短時間に全力で運動しなければならないからである。陸上競技において、短距離と長距離とではスタート準備姿勢が異なるのと同じで、ゴルフスイングにもそれに適した姿勢が有るというのが私の考えだ。いい加減な姿勢から行われたスイングはクラブに最大加速を与える事が出来ないのである。
 そして、ゴルフが滑走路のように平らなフィールドで行われるのではないと言う事を忘れてはならない。特殊な条件下でない限り役に立たないスイングはゴルフスイングとは言えない。故にアドレスポジションは許容範囲の広いものでなければならない。
 アドレスポジションこそゴルフの究極の基本である。故に私はゴルフスイングの事を書くに当たり、まずここから筆を起さざるを得ない。
 アドレスポジションにおいてもっとも大事な事は2つ有る。安定した姿勢である事と、動き出しやすい姿勢である事だ。全身を激しく動かす運動であるゴルフスイングは、体の安定を失いやすい。そして、静止した姿勢から動き出す必要が有るために、動き出しにくいアドレスポジションはゴルフスイングに不適当だと言う事が出来る。この相反しているのではないかと思えるような2つの条件をクリアする事がアドレスポジションには求められているのだ。
 ゴルフスイングにおける体の動きは複雑で繊細だが、注意深く観察すると積極的に動かすべき部分と積極的には動かすべきではない部分とに分かれている事が分かる。意識の上では動かさない様にしている部分を動きにくくし、積極的に動かすべき部分はフリーにすることが、アドレスポジションには求められている。意識的には動かそうとしていなくても動いた方が良い部分は動きやすくし、動かさなければならないのだが動きすぎると良くない部分は抑制できる様であれば更に良い。究極的にはアドレスポジションをとっただけで正しいスイングが自動的に行えるようなアドレスポジションを目指すべきだろう。正しいアドレスポジションをとった場合、スイング中に考えなければならない事が少ない事は驚くべき程である。
 理想のアドレスポジションに一番近い姿勢は、普通に直立した状態である。全身をリラックスし、背中は自然に伸ばしひざは自然に緩む。両手は自然に下げられ、首も真っ直ぐだ。もっとも安定し、もっとも動き出しやすい。
 しかし、この姿勢ではボールは打てないのである。この「自然体」をできるだけ崩さない様にボールにかがみ込むことが理想のアドレスポジション作成の第一歩である。
 ボールに向かってかがみ込まなければボールが打てないのだからしかたがないのだが、この段階であっさり背中を丸めてしまうことは、スイングを台無しにする。背中を丸める姿勢は背骨を軸とした回転運動を阻害し、背筋に不必要な緊張を生み、上腕をあまりにも自由に動かさせてしまう。背中を自然に伸ばす事は、私のスイング理論の基礎ともいうべき重要事項である。
 背中を丸めずにボールに対して前傾するには股関節から身体を折り曲げるしかなく、またそうすべきである。腰を後方に引く様にして体を折り曲げると、肩の位置が真っ直ぐに下がり、直立した姿勢と同じ安定した姿勢のままボールにかがみ込む事が出来る。
 出来ればこの姿勢のままボールを打ちたいのである。ゴルフが平らな地面でのみ行われる競技であればそれも可能だろう。しかし、時折フェアウエイの真ん中であるにもかかわらず傾斜地でボールを打たなくてはならないゴルフでは、安定性と対応力においてこれでは不足である。
 サスペンションの役目を果たす部分が必要なのである。人体においてこの役目を果たせる部分が有るとすれば膝しかない。平らな所で立って、膝を親指の付け根の辺りにまで曲げる。この結果、腕の付け根と膝頭、足の親指の付け根が地面と垂直に1つのラインに揃うはずである。
 つま先下がりの傾斜の時は、この基本を越えて膝を曲げて構える。なぜなら膝を柔軟に使って身体の安定度を上げなければ容易に姿勢を崩し、ボールが打ちにくいからである。逆につま先上りの傾斜では、膝を伸ばして下半身を固定しないと、上体を使いすぎるスイングになり易い。ちょうど良い具合に膝を曲げることは、コンスタントに良いスイングをするために必要な事である。
 以上によって完成された基本姿勢が、アドレスポジションの基本形である。
 基本姿勢からは、クラブの種類、打ちたいショットによって様々に発展できる。そして、プレーヤーの体格や筋力、得意分野によって微調整を加えてよい。
 これから記すのはその微調整に属するもので、プレーヤーによっては有益だったり、そうではなかったりするものもある。慎重に取捨選択すべきである。
 左右の足のつま先は20度ほど開いているべきだが、身体の柔軟なプレーヤーは右のみを飛球線に直角に置いた方がよいかもしれない。
 両膝は同じだけ曲がっているのが基本だが、下半身が動きすぎるプレーヤーは右足を「蹴り込み」目にして、右膝を伸ばし目にしておいた方が良いかもしれない。その結果重心は70%ほど左に掛かる事になり、特にアイアンが打ちやすくなるだろう。
 肩は、基本的には地面と水平になるべきだがこれも打ちたいショットによって変わる。

2.グリップ
 アドレスポジションの項目で私は意図的に腕や手の位置に触れなかった。それは腕のポジションはグリップと密接に関わっていて、切り離して考える事は出来ないと考えたからである。
 言うまでもなく、手はクラブとの唯一の接点であり、クラブの握り方は非常に重要である。しかし、グリップ単体を抜き出して考える事はアドレスポジション全体をトータルで考えた時、有害であると言わざるを得ない。なぜなら、手をひねったり手首を下げたりすれば、身体の姿勢は変わって当然だからだ。変わると言う事が分かっていればまだ良いが、無意識に姿勢が変化した事に気付かずにスイングを壊してしまうプレーヤーが余りにも多いのである。逆にいえば、悪い姿勢をしたまま良いグリップをする事は難しく、グリップ単体で練習している時にはうまく出来ても、構えたらうまく握れなくなると言うのは構え方がおかしいのである。
 つまり、ゴルフスイングにおいてグリップが重要だと言うのはアドレスポジションに対する影響が大きいからであると言える。
 良いグリップを作るためには良いアドレスポジションが必須である。良いアドレスポジションの基本は1章で述べた。これから述べる事は、それが理解されていると仮定しての物である。
 正しいアドレスポジションをとり両腕を真下に伸ばす。ひじの裏を正面に向け、腕同士を軽く引き寄せる。腕のポジションを簡潔に述べるとこのようになる。このポジションをとる目的は両腕の動きの方向を制限する事である。腕・手は、人間の身体の中で、日常生活において最も活躍する部分である。その使用用途は多岐に及び、関節は本来曲がらない方向へもねじられさえする。ゴルフスイングを考える上でこの腕の器用さ、応用力の高さはしばしばマイナスとなる。
 多くのプレーヤーが間違ったゴルフスイングを身に付けてしまう最大の原因は、腕・手の器用さに起因する事が多い。間違ったアドレス、間違ったスイングから、彼らは信じられないような器用さでもってボールを捕らえ、ナイスショットを打つ。そのプレーヤーが非常に才能に恵まれており、非常に練習熱心であった場合、相当なレベルのプレーヤーに育ってしまう場合さえある。
 しかしこの様な変則スイングは、大抵の場合安定したボールコンタクトが出来ず、リズムとタイミングに頼るためにプレッシャーに弱く、体力の変動に伴ってスイングを維持できなくなるのが普通である。殊に練習不足のプレーヤーの場合、ボールコンタクト自体が奇跡的な事にもなりかねない。
 腕を自由に動かす事はスイングを破壊してしまう可能性を持つ。しかし、余りにも腕を使わないスイングは、ボールの飛距離に致命的なダメージを与え、様々な状況への対応の幅を狭めてしまう。腕の動きを望ましい方向のみに限定できれば、腕を存分に振り回せるのである。
 殊に肩とひじと手首の関節の動きを限定したい。これらの関節が誤った方向に、しかもバラバラに動いてしまうのはあまりにも動きが複雑になり、一定にスイングを維持するという目的にどうしても合致しない。
 そのためにまず、両肘を軽く絞って肩を決めてしまう。そうすることによって脇が開いたりひじが開いたりするのを防止し、ひじの動きの方向を正しい方向のみに限定できる。右ひじを曲げるだけでテ−クバックし左ひじを畳むだけでフォロースルーできれば、腕の動きは極めて単純になり、腕を最大限に使ってスイングするための道が開けるのである。
 この時に気を付けなければならないのは、両肘を突っ張らない事である。両肘の硬直は、首の回りの筋肉に過度の緊張をもたらし、肩の回転を阻害する。
 また、両肘を外側に曲げてしまうのもいけない。両腕の動きがボディターンからかい離し、振り遅れの原因になる。ひじの裏側の窪みを正面に向けると、脇が開かないので肩の回転と腕の振りは完全に同調する。
 腕のポジションが決まれば、後はクラブを持つだけである。プレーヤーによって手の大きさは異なり、結果としてグリップの外観は変わってくる。そのため、グリップがどう見えるかということを基準にしてクラブを握る事は、せっかくのアドレスポジションを破壊してしまうもととなる。
 気を付けなければなら無いのは、クラブを横から握らないと言う事である。上からクラブにそっと置く。腕のポジションを崩さずに持てないのであれば、その持ち方は間違っていると考えて良い。
 親指の付け根と掌の腹の間が開いているのは良くない。親指が伸びすぎた結果、手首の位置が下がりすぎる危険が有る。手首の位置が下がると、ひじと肩が過度に緊張してしまう。
 グリッププレッシャーは非常に難しい課題である。私は古くから言われている「ひよこを逃がしも潰しもしない程度」という格言の信奉者だが、これが完全に正しいのかどうかという事については確信が無い。力の弱い人にとって、これでは不安感が残るのではないかと思うからだ。テ−クバックの初期にクラブを握り直す悪癖の原因になりかねないとも思う。しかし、強く握りすぎる事は手首を固くし手首の使い過ぎの原因になり、微妙なタッチをショットに反映する事を不可能にするということは間違い無い。
 完成されたグリップは、手の一部分ではなく、両手全体でクラブを包み込んでいるというフィーリングをもっているものだ。クラブを絞ったりつまんだり捻じったりすればそういうフィーリングは生まれなくなる。私は、手の一部分を強調してクラブを持つ事は勧めない。グリップはほとんど無意識に行われなければならず、正しいアドレスポジションさえ保っていれば、グリップは放っておいても正しくなるものだと確信する。
 最後にグリップの種類に付いて述べたい。クラブの握り方にはテンフィンガー、オーバーラップ、インターロックの3種類がある。そこから派生した色々なバリエーションもあるがそれはこの際考えない。基本的には左手親指を伸ばし、それを右手でシャフトと一緒に握りこむということにおいてこの3種は共通であり、この共通項が守られている限りどの握り方をしてもスイングに大した影響はもたらさない。後はフィーリングの問題であり、よく言われる腕力とグリップの関係は実はそれほど関係が無い。両手を離して握るフィーリングを得たいプレーヤーはテンフィンガーを、両手に一体感を得たいプレーヤーはインターロックを、その中間を求めるプレーヤーはオーバーラップを使うと良いだろう。

3.アドレス総括
 アドレスについてもう少し述べたい。アドレスがゴルフ全体に(ゴルフスイングではない!)及ぼす影響の巨大さを思えば、多少のくどくどしさはご容赦頂きたい。
 アドレスを作り上げる際に重要なポイントでありながら、見逃されやすいポイントとしては、構えの再現性の問題があげられる。
 しっかりした構えを取る事は非常に重要な事だが、同時にそれは何度でも繰り返し正確に再現できるものでなくてはならない。体格に対して不自然だったり、筋力に対して無理の有る構え方は、疲労やプレッシャーによって同じ構えを再現できなくなりやすい。また、無意識に構え方が変わってしまう場合、目指している構え方が自分の体質に合っていない事が考えられる。
 この様な場合対処法としては、構え方を自分の体質に合わせて変えるか、鍛練して体質を改善する(筋力トレーニングや柔軟体操によって)かの2つが考えられる。どちらが良いとはいえない。ただ言える事は、自分に合わない構え方をしていては、コンスタントなスイングは望めないと言う事である。基本に忠実でありながら自分の体質に合った構え方を探すのは、ゴルフスイングを探求する上での永遠のテーマとなるだろう。
 飛球線に並行に立つというゴルフスイングにおける基本中の基本について、私はアドレスの基本を解説した1章で1度も触れなかった。それは、私がそれを行っていないからである。私は、明らかに飛球線に対してオープンに立つ。下半身は20度ほどオープン肩のラインもややオープンである。この様な構え方をする理由は、私が基本的にフェードヒッターであることと、上半身に対して下半身が弱いために腰が止まりやすく、予め腰を動かしやすい様に開いておくためである。私は、他のプレーヤーがこのように構えるべきだとは思わないが、私のような身体的特徴を持つプレーヤーには合っていると思う。逆に、足が動きやすいプレーヤーにはクローズスタンスで足の動きを制限する構え方が合っているだろう。スクエアに立つという基本は、この様にプレーヤーの身体的特徴によって変えなければならない。私の記したアドレスの基本も、プレーヤーの個人的資質によって当然カスタマイズされねばならない。基本を良く理解して、自分に合った構え方を探して頂きたい。

4. テ−クバック
 良いアドレスをとり、スイングを行うにあたってもっとも大事な事は、せっかくの良いアドレスポジションを崩さない事である。特にテ−クバックの初期においてせっかくのアドレスポジションを崩してしまうプレーヤーは多く「クラブが30cm真っ直ぐ引けるかどうかがスイングの正否を分ける」という格言はそのまま真理となる。
 テ−クバックの最初期に行うべき動きは一つしかない。右足親指付け根方向への水平な体重移動である。
 身体のあらゆる部分は意識的には動かさず、重心だけを慎重に動かす。その動きによってクラブヘッドは自動的に、真っ直ぐに後方へアドレスと同じ高さを保ったまま引かれる。身体のほとんどの部分を動かす事無くテ−クバックを始める事が出来るはずだ。
 テ−クバックでもっとも犯しやすい過ちは、急激に手を動かしてクラブを振り上げる事である。手を大きく動かす事によってアドレスで作り上げたバランスは瞬時に崩れ、腕に頼ったスイングをせざる得なくなる。スイングの最初期において手と腕のするべき事はクラブを持つ事だけなのである。
 この時、右足はアドレス時の角度と膝の曲がりを維持するために非常に緊張しているべきである。この右足の緊張が蓄積されたパワーの証明であり、ダウンスイングですばやく体重を移動するための準備なのである。

5.バックスイング
 テ−クバックで正しいポジションをとったら、バックスイングと言うのはほとんど完成されたようなものである。そのまま右ひじを曲がるべき方向に曲げるだけで、正しいトップオブスイングは完成する。バックスイング中それ以外の事を意識する事は難しく、また、意識すべきでもない。肩や腰をひねる動作や手首のコックなどは正しいテ−クバックをすれば自然と実現できるはずで、意識してやるべき物ではない。
 なぜなら、バックスイングは非常に短時間に行なわれるものであり、自分に見えない方向へ行なわれるものだからだ。出来るだけ単純に行うようにしなければ、スイングのテンポをつかみにくくなる。

6.トップオブスイング
 トップオブスイングはスイングの折り返し地点である。必ずしも静止したポーズがあるわけではなく、クラブを振り上げようとする力と、振り下ろそうとする力とが拮抗した点と言いかえる事も出来る。
 トップオブスイングをポーズだと考えその形を重視する考え方は、しばしばスイングの繋がりを破壊する。いわゆる「格好良すぎるトップオブスイング」は、ダウンスイングを力任せに行う原因になる。

7.ダウンスイング
 ダウンスイングを始める時にもっとも気をつけるべきポイントは、左足かかとに重心を移す事から始めなければならないと言う事である。
 トップオブスイングで右足つま先に掛かっていた重心をすばやく左足かかとに移す。スピードは早ければ早いほど良い。
この動作の目的はダウンスイングにおける回転軸の構築である。言うなれば一般に言われている所のダウンスイングを行うための準備動作である。この動きが無いままダウンスイングを始める事は、卵を割らずに目玉焼きを作るような物で、成功するはずが無い。
 この動作は、高くジャンプするために膝を沈めるのと同じで、ごく自然な動作である。この動きをあえて強調して行う訳は、ダウンスイング初期に手の動きを忘れたいからである。逆に手の動きを強調してダウンスイングを行うと、重心移動がおろそかになる。それは、スイングを自然な動きから遠ざける結果となるから、あえて重心移動の方を強調するのだ。
 すばやい重心の移動は、ロングヒットに繋がる重要な要素である。ロングヒットを生むのはパワーではなくスピードであり、殊に重心移動のスピードはヘッドスピードに直結する。
 左の軸足に重心移動を行えば、後は身体の絞りを解き放つだけで良い。しかしここで重要なポイントが有る。あまりにも急激に身体をスピンさせると、腕の振りとシャフトの撓りが付いていけずに振り遅れになる。その結果、バックスイングで貯えたパワー全てをヘッドスピードに変える事が出来なくなる。身体の回転は、手の振りに同調させるべきである。具体的に言えば、左腕を伸ばして脇を閉めたままインパクトを迎える事が出来るスピードで体を捻じり戻すべきなのである。左腕が曲がってしまうのなら身体の回転が速すぎ、脇が開くなら身体の回転が遅すぎる。
 このコントロールされた捻じり戻しこそゴルフスイングの秘訣とも言うべき物で、ボールにすべてのパワーを伝えるために是非とも身に付けたい動作の一つである。上級者のスイングがあれほど軽やかで力が抜けているように見える理由はここに有る。身体の回転と腕の振りに時間差のあるスイングは、一見パワフルだがロスも大きい。

8.インパクトゾーン
 インパクトゾーンはゴルフスイングの聖域である。秒速40mを越えるスピードで動くクラブヘッドをどうやってコントロールするのか?0.001秒程度に過ぎないクラブフェースとボールとの接触時間で、どうやってフィーリングを出すのか?実に人間の感覚の神秘的なこと到底私などの考えの及ぶ範囲ではない。
 はっきり言って、ここで意図的な動作をクラブヘッドに加えることは、そもそも不可能である。ゆえにインパクトでは「ボールをしっかり打つ」事のみに集中しているべきである。

9.フォロー・フィニッシュ
 フォローからフィニッシュにかけては、スイングのおまけであって意識して動かすべき部分は何も無い、という人がいる。これは、一部分だけは真理である。
 しかし、フォロースルーにおいて完全に脱力し、身体をコントロールするという意識を解いてしまう事は、フォロースルーその物よりもむしろスイングのそれ以前に悪い影響を与える。つまり、スイング全体がルーズなものになってしまうと思う。
 身体を飛球線方向へ流さず、前傾姿勢を起さず、しっかりと右肘を伸ばしきる。私がスイング中最もパワーを必要とする部分は実はこの瞬間である。
 スイングのそれ以前が間違っていなければ、ここでいくら力いっぱいクラブを降り抜こうと何の問題も無い。それどころか飛距離と方向安定に多大の効果をもたらすのである。
フィニッシュはスイング全体の結果であり意識的に作るポジションではないが、良いフィニッシュポジションを体に覚え込ませることはスイングを作り上げる上で必ずしも無益な事だとは言えない。
 フィニッシュポジションは、トップオブスイングの対称であるのが理想である。体が、トップポジションとは逆の方向にコイルされるぐらいの意識が欲しい。体の左サイドが伸び切ったり、逆に潰れてしまったりするフィニッシュは、スイング中身体の動きをコントロールできていない証拠だといえる。

10 ゴルフスイングについての考え方。
 ゴルフスイングとは、言うまでもなくボールを打つための動作であるが、多くのプレーヤーがその事にこだわり過ぎる。
 ボールを打つ事はゴルフの全てではない。ゴルフは、一打でも少ないスコアでホールアウトする事が目的のスポーツである事を忘れてはならない。
 故に、ゴルフコースに出た時点で、スイングの事など忘れてしまうのが望ましい。更に言えば、無意識に正しいスイングが出来るようになるまで練習すべきである。スイングを探求するという事はそういう事なのである。ラウンド中にもスイングの事だけを考えている人が居るが、それはスイングに振り回されているだけで、スイングを探求しているとは残念ながら言えない。
 ゴルフスイングの基本はここに記した通り非常に単純なものなのである。ここに記した事を頭に入れて、後はひたすらにボールを打つ事である。大事な事はうまく行かないからといって、スイングを簡単に変更しない事である。特に、基本を身につけないままにスイングのマイナーチェンジを繰り返しても、害こそあれ益になる事は絶対に無い。
 矛盾するように聞こえるかもしれないが、ゴルフスイングは非常に微妙なもので、同じスイングをしたからといって結果が同じになるとは限らない。ゴルファーなら誰でも、なんでだか分からないが当たらない時が必ずあるものだ。その時に、スイングを変えようとするか、基本を信じてひたすら球を打つかで、ゴルファーの将来は大きく違ってくる。
 その事は誰でも知っている事である。しかし、ミスショットが続けて出たとき、その事に耐え、もくもくと球を打ち続けられる人は少ない。小手先の技術で何とかしようとする人が大半であろう。しかしその小手先の技術で身についてしまった癖を抜くためには1000球の打ち込みを必要とするかもしれないのである。
 もう一度言う。ゴルフスイングの基本は非常に単純なものである。後はひたすらその反復しかない。上級者がすばらしい球を打つのは不断の努力によって身体に基本を染み付けているからに他ならない。






TOP