コースマネージメントの基本

  コースマネージメントなどというとえらく高度で難しい事だと思われるかもしれない。

  初心者にこそコースマネージメントが重要なのだと力説しても「狙った方向に打てないのだから」と言って初めから聞いてもらえない事が多い。

  しかしながら、コースマネージメントはけして上級者の専売特許の高度なコース攻略を意味する訳ではない。

  コースマネージメントの基本は3つある。

1、出来ない事はしない。

2、最悪の事態を避ける。

3、コースをよく知る。

 この3つさえ出来ていれば実力よりも多すぎる打数を叩いてしまう事はほとんど避ける事が出来る。

  まず1だが、何よりもこれが重要である。こんな当たり前の事は分かっていると読み飛ばさないで頂きたい。これが完全に実行できているプレーヤーは実に極少数なのである。

  単純な例を挙げよう。残り距離は200y。手前には池。池を越えるには180yのキャリーが必要である。このような場面であなたはどのような選択をするだろうか?

  僕の経験から言えば、180yのキャリーをフェアウェイから打てる人はまずハンディキャップ一桁のプレーヤーである。シングルさん以外はまず越せないのである。

  しかしながら、これも僕の経験上、ほとんどのプレーヤーがここでフェアウェイウッドを手にする。そして、90%の確立で池に落す。

  なぜ池に落ちてみすみす1ペナの憂き目をみるのか?これこそが出来ない事をしてしまったプレーヤーの典型的な姿である。

  ここで重要なのは、池に落してしまったのはミスショットしたからではないということである。コースに出てキャリー180yのボールをフェアウェイウッドでどれくらいの確立で打てた事があるのか考えてみたらよい。確立30%などという数字が出ている筈である。10回中3回しか成功しないのに、入れば確実に1ペナを被る池越えのショットにチャレンジして勝算を求めるのは傲慢であると言わなければならない。

  ここで重要なのは、手前に池が無ければもちろんフェアウェイウッドを持ってもよいということである。例えミスショットをしてもそれは唯のミスショットだからである。しかし、手前に池がある場面でのミスショットは、単なるミスではなく避けられた筈の1ペナをわざわざ払ってしまった最悪のミスになるのである。

  自分の実力を過信せず、出来る事と出来ない事を見極めて次に打つべきショットを選択する事こそコースマネージメントの基本である。これは上級者でも初心者でもまったく変らない。むしろ出来ない事がより多い初心者にこそ重要な事であるのは言うまでもない。

  2であるが、これも当たり前すぎると思われるかもしれない。しかし、このような場面を目にするにつけ、これも常識になっているとはとても思われない。

  グリーン手前に大きなバンカーがある。あそこに入ったら大変だ。しかして、ショットを打つ。するとショートしてバンカーに入ってしまう。

  一見、唯のミスショットに見える。しかし、このミスは避けられたミスである。

  このバンカーには「ショートさえしなければ入らない」のである。ならば、大き目の番手を持って打てばよかったのである。打ち過ぎてオーバーしてもそのバンカーよりも遥かにマシであろう。グリーンは大体縦幅が20yはある。1番手大きいくらいならグリーンをキープする事は出来るはずである。

  無論逆もある。オーバーすると速いパットが残る。ならばオーバーしない様に短めの番手を持てばよい。

  この当たり前の選択が、出来ない。多くのプレーヤーは出来ていない。左に打ちさえすれば避けられる右OBに打ってしまうなどというのも同様である。ようするにショットを打つ前に最悪のミスはなにかということを把握していないのである。残り距離表示に合わせてぴったりの距離を打つ事しか考えない。フェアウェイ中央、グリーンのピンしか見ていない。OBやバンカーにボールが消えて初めてその存在に気が付く有り様では、ばね仕掛けの機械がゴルフしているのと変らない。

  一部を除いて、逃げ場が存在しないホールなど無い。冷静に観察すれば自分の実力にあった攻略ルートが必ずある筈である。これを見つけ出すこともゴルフの楽しみの一つである。

  最後に3であるが、これも別に芝目とかラフの深さとかの事を言っているのではない。グリーン回りに見えている以外のバンカーはあるのかとか、グリーンをオーバーしたらOBになってしまわないかとか、コース図を見るなりキャディに確かめるなりすれば容易に分かる事を確かめれば良いのである。

  実は、2はこの3が出来ていなければ出来ない。コースを知らなければ最悪の事態を避ける事が、当たり前だが出来ないからである。この部分をあっさり疎かにするプレーヤーの何と多い事か。ホールに到着すると何も考えずにドライバーを抜き、ただ前を見てドライバーを振る。厳しい事をいえば、そんなのはゴルフではない。唯の球打ちである。上級者になればなるほどティーグラウンドにおいて時間を掛けてそのホールの攻略法を組み立てる物なのである。

  この様に、コースマネージメントなどと言っても、けして頭が痛くなるような事を強いられる訳ではないのである。昔から言うではないか「敵を知り、己を知らば百戦危うからず」と。要するにそういうことである。練習場で自分の実力を冷静に把握する事も、スコアアップの役にたつのである。







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