ゴルフ脳

  頭が悪い奴はゴルフが上手くならない。

  こんな事を言うと、ゴルフが上手い奴は全員一流大学卒なんか?と言われそうだが、そういう意味では勿論無い。

  言い換えよう。ゴルフ脳が成長しないプレーヤーはスコアを縮めることが出来ない。

  ゴルフ脳とはなんぞや。そのことを理解して頂くために一つ自分の恥を晒してみよう。

  私は、一番練習し、良いショットを打っていた頃の平均スコアはハーフ42であった。その頃勤めていたゴルフ場の、知り尽くしたコースでのスコアである。何度回っても、大体このスコアで上がってきた。

  今、ろくすっぽ練習もせず、そのコースを回っても、大体43くらいで回ってくる。

  しかし、その内容には天と地の差がある。

  一番良いショットをしていた頃の私は、プロは言い過ぎだが、今考えると凄いレベルの球を打っていた。ドライバーでOBなど打ったことも無かった。しかも、距離は260yくらい出ていた。8番以下のショットならピン側につかなければミスショットのような気がしたものだった。

  今は?ドライバーでは220yも飛べば飛んだ方だ。OBとはお友達。ショートアイアンでもグリーン周りに落ちれば満足という感じ。おまけにパターも下手糞だ。

  これで、ほとんど同じスコアが出る。一体どういう事なのか。ここにゴルフ脳が関わってくるのである。ぶっちゃけて言えば、かつての私はゴルフ脳がからっきし駄目だったのだ。

  ドライバーでは、とにかく距離を出すことしか考えない。アイアンショットはピンしか狙わない。アプローチはどんな時もカップインを狙っていた。ゴルフ脳が幼いプレーヤーの典型的なゴルフである。技術に溺れてゴルフの本質を見失っているのだ。

  ゴルフの本質とはなんぞや。

「ゴルフとは、一打でも少ないストロークでホールアウトすることを目的とした競技である」

  では不正解である。いや、正解ではあるのだが、これでは本質を誤解してしまう恐れがある。本当の正解はこうだ。

「ゴルフとは、自分の実力で出せる最も少ないスコアを出すことを目的とした競技である」

  この2つのどこに違いがあるのかが分からない人は、多分かつての私のようなゴルフをしている筈だ。

  簡単に言おう。ゴルフにおいてやってはいけない事は「出来ない事をやる」ということに尽きる。深いラフからロングアイアンで池越えのグリーンを狙うなどの自分には絶対に不可能な事にチャレンジすることは、ゴルフにおいてスコアを崩す原因の最たるものであると知らなければならない。

  そして、中でも多くの人がやってしまっている「出来ない事」。それが「目標スコアの設定」である。

  多くの人は言う。「100が切れればいい」「80台が目標」しかしながらそのほとんどが口だけ目標である。真剣に目指していないのだ。では幾つのスコアを目指してしまっているのか?それはもう、みなさん72、パープレーを目指してしまっているのである。

  嘘だと思うならどこででもいい。ティーグラウンドに立っているアベレージ・プレーヤーにこのホールを幾つで終えたいか尋ねたら良い。ほとんど全員が「パーで」と答えるはずだ。

  大不正解である。アベレージ・プレーヤーの平均スコアが95だとしよう。この95で回るにはどのように18Hを回れば良いのか。95=23オーバーである。ということは、18H全部ボギーで回って、更にその内5Hではダブルボギーを叩いても良いのだということになる。

  つまり、パーなど必要無いのだ。89を目指す際になって初めて1つパーが必要になる訳だが、それだってたった一つだ。85を切る事を目指せば5つのパーが必要になり、やや真剣にパーを狙わなければならなくなるが、それまではパーなどまったく狙う必要が無いと断言出来る。

  アベレージ・プレーヤーが「パー」を目指すのは不遜な事なのである。ティーグラウンドに立って目指すべきは「ボギー」であって、難しそうなホールなら「ダブルボギー」にまで目標を落さなければならない。つまり、難易度の高いコースであるならダブルボギー設定のホールが増える訳だから、合計目標スコアも増えてしまう訳である。

  レベルの高いプレーヤーであればあるほど、ラウンド前に設定した目標スコアと合計スコアの間に差が生じない。ハンディキャップ一桁のプレーヤーならまず間違い無く一致するはずだ。この場合、コースの難易度だけではなく、コースの特性、自分へのマッチングに加え、自分の調子、実力をも正確に把握していなければその様な芸当は出来ない。

  しかも、レベルの高いプレーヤーが自己申告のハンディよりも大きく「下回ってしまう」スコアを出す事もまず無い。アベレージ・プレーヤーでは希に、これが出てしまう事がある。これはアベレージ・プレーヤーの場合、自分が上達しているのかどうかという客観的な自己評価が出来ていないからである。自分の実力を客観的に把握出来ているかどうかは目標スコア設定に大きく関わってくる。

  この目標スコアの設定に代表される頭の使い方がゴルフ脳である。「ゴルフとは、自分の実力で出せる最も少ないスコアを出すことを目的とした競技である」ということを正しく理解し、考えれば、自ずとコースで考えなければならない事と成すべき事が見えてくる。

  このワンショットがラウンド全体でどのような意味合いを持つのか鳥瞰的に、正しく認識し、実力においてなし得る最善の行動を取る。言うのは易しいが、多くの場合これが出来ないために自分の実力以上のスコアを叩いてしまうことになっている。だからこそゴルフ脳は重要なのだ。

  ゴルフ脳を鍛える方法としては、ラウンドが終わった後でその日の全ての打数を思い返し、それを逐一分析する事がもっとも効果的だ。他に選択肢はなかったのかを徹底的に分析するのである。悪いスコアが出た日のラウンドを即座に忘れるようとするゴルファーは駄目ゴルファーの典型だ。ミスショットに目を瞑らず、心を鬼にしてこの選択が出来ていれば幾つで上がれたかを想定するといい。

  自然と、自分の犯し易い判断ミス、技術的な欠点、課題が浮かび上がる筈である。それを改良して行けば次のラウンドで必ずスコアはアップする。

  もう一度言うが、頭の悪い奴はゴルフが上手くならない。これは私が常に心に命じていることでもある。技術を磨くだけでは駄目だという事が理解出来て初めて、ゴルファーは真の上達への扉を開く事が出来るのだと理解すべきである。


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